アル中病棟 入院準備編(2):入院日の決定(初外来と病棟見学)

02.アル中病棟 入院準備

今回は「入院準備編その2」です。いざアルコール依存症で入院できる病院を探しても、当然ですがいきなり入院できるわけではなく、まずは外来にて先生の診察を受け、そこでOKが出たら入院が決まります。

今回は、入院日を決めるまでのプロセス(病棟見学なども含む)について紹介したいと思います。

※参考:前回(入院準備編その1はこちら↓)

アル中病棟 入院準備編(1):入院先を探す ― アル中病棟に入院するのは、わずか1%の「恵まれた」人たち
2018年秋、私は人生で初めて、アルコール依存症での入院を決断しました。 ……それでは早速、入院体験記を書き綴っていきたいところなのですが、ここでは入院"中"の話をする前に、入院する"まで"の準備期間(入院探し〜入院待ち)の段階につい...

入院先となる病院の外来診察を受ける

さて前回、アルコールですべてのやる気を喪失していた自分は、病院探しもすべて家族に「お任せ」の状態だったと書きました。なので、自宅からほどほどの距離にあったとある病院への電話相談や外来予約も、家族にやってもらった形になります。

それでも私の場合は、いくつかの判断基準はありました。というのも、いくつか候補となる(アル中病棟のある)病院を調べてみてもらったところでは、

  • 初回の外来時には、家族同伴で来てください

ということを条件にしている病院がわりと多いのです。おそらく実際のところ、アルコール依存症者の場合は「なんで自分なんかが入院しなきゃいけないんだ!」と入院を「否認」する場合も多いので、こうした家族同伴を条件に設定しているところが多いのではないかと思います。しかし私の場合はちょっと事情が違って、家族の(物理的な)事情もありましたし、(酒は飲んでいるにもかかわらず)入院することは完全に決意していましたから、なるべく自分1人の外来受診でも入院が決められるところを候補にして探してもらっていました。

なので、選んだ基準は本当にそれだけだった、とも言えます。そして私は、最初に見つかった「外来時、一人でも入院可」という病院へと足を運びました。さすがにこの初外来のときは、交通事情を考え自動車で行くつもりだったため、朝から酒を飲むことは当然ありませんでしたが、それゆえに離脱症状(吐き気)に苦しみながらも病院へと向かいました。

確か午後3時を過ぎたころ、病院としてはもう外来もほぼ終わりに近い時間帯だったと思います(昼夜感覚が完全に逆転、ないしは喪失していた自分にとっては、まだ15時というと「起きて早い時間」くらいの時間帯でしたが……)。私は病院を訪れました。これはたいていのアル中病棟のある病院には共通していることだと思いますが、駅そばのアクセスのよい場所にはありません。駅からとても離れた、いったい誰がこんな場所を訪れるのだろうと思うような、ひっそりとした場所を立地にしていることが多いのではないでしょうか。私が入院した病院は、まさに「こんな場所に隠されていたのか」というような場所にありました(カーナビを使っていても、「本当にこの先にあるの?」と迷ってしまうようなところでした)。

車を停め、外来予約で訪れた旨を伝え、診察室の前で待っていると、ほどなくして診察が始まりました。私の場合は最初から入院する気で来ていましたので、今日に至るまでの数年間、アルコールにのめり込んでいってしまった過程や、実際に社会生活が破綻をきたしていること、抑うつ状態(やる気が出ない)・希死念慮が出ている精神状態なども洗いざらいお話しました。離脱症状の話もしましたので(面談中も、薬で抑えていた離脱症状が少し出てきていました)、「それはアルコール依存症で間違いありませんね」との診断をいただき、最後にはアルコール依存症での入院を認めていただきました。ちなみに私の場合はアルコール依存症との自覚もはっきりありましたので、スクリーニング・テストなどを受けることもありませんでした。

ただそのとき私がちょっと驚いたのは、「ちょうど今日病床が2個ほど空いたので、もうすぐにでも入院をすることができます。さすがに今日や明日からというのは、準備もあるので無理でしょうけど、今週からでもいいですよ」と言われたことでした。まさかこんなにあっさりと入院が決まるとは思っていなかったので、少し拍子抜けをしてしまいました。

どうも診察室での先生たちの電話でのやり取りを聞いていると、実際には初外来のあと、どのようなクランケ(患者)だったのかについてアル中病棟のほうと情報交換をし、その上で入院するかどうかが正式に決まるようです。そういえばこのとき、「多分、こちらの方は大丈夫そうなので」と先生が電話先へ伝えているのが聞こえました。おそらく、アル中病棟のナースステーションと電話をしていたのだと思います。その後入院してから聞いた話では、やはりある程度入院する人については、「共同生活をしていく上で問題がなさそうかどうか」のスクリーニングはしているようです。といっても、普通に診察で先生やナースの方とのやり取りが交わせる程度であれば大丈夫なのだと思いますが、アルコール依存症で無理やり連れてこられて来たような人の場合は、おそらく入院を拒否されてしまうケースもあるのかもしれません。

初めてのアル中病棟見学

そして私は「まだ時間はありますか?」と聞かれ、「入院するのであれば、早速病棟を見学して行かれますか?」と聞かれました。私は即座に「はい」と応えました。「あ、お酒は飲んでいませんよね?」「はい、もちろんです」というやり取りもありました。やはり入院患者の方への刺激となってはまずいので、酒気帯びの人間が病棟に入ることは許されません。私は入館証のようなものを首からぶら下げ、「ここから先になります」とナースの方の先導に従いながら、アルコール病棟への階段を登っていきました。

アルコール病棟に到着すると、病棟専属スタッフの方にバトンが渡され、同病棟を担当する士長の方ともごく簡単な挨拶を交わしました(皆さん忙しそうにされていたので、本当に「お世話になります」と一瞬だけのご挨拶になってしまったのが印象に残っています)。「入院患者以外、立ち入り禁止」との札がぶら下げられた病棟スペースに入ると、幅の広い廊下がずっと奥まで続いており、その片側には病室やトイレ、約50名程度が入れる食道部屋がありました。この廊下はロビー(休憩・談話スペース)も兼ねていて、そこかしこにソファやテーブルが置かれ、2箇所にはTVも置かれていました(そこは病室内にはTVは置かれていませんでした)。またそこは珍しいことに、なのかはわかりませんが、廊下の窓のちょうどびったりと張り付くような形で、タバコを吸う喫煙スペースが置かれていたのも印象的でした(いまどき病棟の中で喫煙できる場所があるというのは、珍しいのではないかと思います。ちなみにその時は誰もそこにいませんでしたが、その理由は後に入院後に知ることになります)。このとき、病室の中まではもちろん見学しませんでしたが、各部屋は最大5人の共同部屋とのことでした。

入ってすぐ感じたのは、非常に静かな空間であるということ。はっきり覚えてはいませんが、診察が始まったのが3時過ぎのことでしたから、ちょうど午後4時前後の時間帯でしょう。入院生活のプログラムでいえば、おそらく風呂への入浴をしているか、(院内の屋外にある喫煙所で)タバコを吸っているか、あとはプログラムはない時間帯なので駅前のスーパーやコンビニへ買い出しにいっているか、あとは自室で昼寝をしているかのどれかでしょう。それにしても人気が少なく、たとえば食道やロビーで入院している人たちが談話している、といった光景が見られることはありませんでした。

ひととおり見学が終わり、病棟の入口に戻ると、そこは古びたマンガが数多く並んだ書棚と、ちょうど学校のように多くのプリントが掲示板にはられているスペースがあります(入院後、そこは毎朝の朝礼が行われるスペースだということがわかりました)。その中でも私の目をひいたのは、掲示板にぶら下げられた「断酒宣言」というひときわ大きいプラパネルで、そこには大きくこう書かれていました。

「アルコールは人を赤ん坊にする」と。その言葉は、妙に寂しく私の心に響きました。

その後、病棟の出入り口にはナースステーションがあり、その奥には女性専用病棟、さらに上の階には男性用の浴場と洗濯場があるということも教えてもらい、見学はいったん終了となりました。

入院日を決める(※普通、自分で自由に入院日を選ぶことはできないらしい)

病棟見学を終えて診察室に戻った私は、入院案内のしおり(パンフレット)を手渡され、入院日を決めることなりました。ずいぶんとあっさり入院が決まった上、いま見てきた場所に明日からでも入院してよいと言われると、ちょっと現実感がない感覚もありましたが、いち早く酒をやめたいと考えた私は、会社への休業申請・連絡や入院準備などにかかる時間をおおまかに考え、ちょうどその翌週に入院日を設定していただきました。

このように、私の場合は自分で自由に入院日を決めることができましたが、これはとても偶然かつラッキーなことだったようです。というのも、これは入院後に分かったことですが、私のときは「たまたまその日に病床が空いた」ときに入れ替わりで入院希望を申し込んだため、自分で入院日を決めることができたのです。

入院してから他の方に聞くと、「いまは入院待ちの方が多いので、1ヶ月くらい待ってください」と言われるケースも多いようです。もし自分が1ヶ月待ちと言われていたら、「せっかく入院する気マンマンで来たのに……」と思って絶望してしまい、ますます酒に走っていたような気がします。

しかも実際には、「入院はあと一ヶ月先」と言われたのに、実際には1週間程度で「もう明後日から入院してください」と急に電話が来て言われてしまう場合もあったとか。当然、言われたほうも「まだ一ヶ月か」と油断もしていますからロクに準備もできておらず、慌てて準備をする羽目になったとその方は言っていました。これはおそらくですが、「約2ヶ月」と決められている入院期間中になんらかのトラブルや事由があって、強制退院あるいは自主中途退院をする方がいて、急遽ベッドが空くということはわりとあることのようです。

これは後の入院記でも書くつもりですが、こうした〈満期退院〉に満たない「強制退院」ないしは「自主中途退院」というのは、私の入院中もわりとよく見られました(実はかくいう私も、とある理由で後者の「自主中途退院」の道を選んでおり、2ヶ月のところを1ヶ月半で中途退院しています。これについては、入院記のほうで詳しく理由を書きたいと思います)。

そして私は一安心して、いったん家路につきました。これも「アル中あるある」だと思うのですが、おかしなものでいざ入院が決まるとなるとホッとして気も大きくなるのか、「これで酒を飲めるのは最後だ」と思って、いつもより酒量は増えてしまいます。それでも入院の準備はしなければいけません。アルコールで体も頭もうまく動かない中、私は病院からいただいた「入院のしおり」を見ながら、自宅になくて購入が必要と思われるものをAmazonでポチっていくのでした……(続く)

アル中病棟 入院準備編(3):入院日まで ― 入院生活 必需品 リスト(その1)
前回の最後でも書いたように、私の場合は幸いにも、入院日までちょうど1週間弱の準備期間がありました。その間に、入院期間中に必要なものを揃えていくことになります。 アル中病棟への入院期間は、ちょうど2ヶ月間でした(昔は3ヶ月が標準だったよ...

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