アル中で入院するまで(2):適度な運動と初めての睡眠薬【格闘編】

01.アル中病棟 入院するまで

γ-GTPが200を超え、脂肪肝と診断された私は、まず適度な運動として、ジョギングやロードバイクでのサイクリング、ボルダリングなどを再開しました(30代のはじめ、自分は一度カロリー制限にハマって劇的な減量に成功し、そこからのリバウンドを防ぐためにこれらのスポーツに入れ込んでいた時期があったのでした)。

しかし、かつてのようにそれにもすぐに飽きてしまうと、もともと学生時代の趣味であった登山に没入するようになりました。登山であれば、コースも天候も眺望も、つまりは条件が毎回のように違いますから、飽き性の自分にはぴったりでした。さらに登山のいいところは、一度登り初めてしまえば、救難ヘリコプターでも呼ばれない限り途中で「もうやめた」というわけにはいきません。必ず歩いた分だけ大量のカロリーを消費し、達成感も日々のスポーツとは比べ物になりません(その分、山小屋や下山後に飲む酒もまた格別に美味しく感じられ、お酒自体を止めるきっかけには全くならなかったのですが……)。

#登山についてはまた改めて、お酒とは完全に切り離したライフワークとして、その魅力や素晴らしさについて紹介していきたいと思います。

さて、こうして適度な運動を始めた自分は、日々の酒量も減らし、毎晩のように飲み歩くのはやめるようになりました。また当然のことではありますが、朝や昼から平然と飲むような生活もきっぱりとやめるようになりました。しかし、酒を飲まないと寝られない体質にはすでになっていたため、不眠にはずいぶんと悩まされることになりました。

それまで酒を飲んでいるときは、寝付きこそ良かったのですが、睡眠時間が非常に短いという特徴がありました。たいてい1日3〜4時間の睡眠でも全然平気で、「自分はショートスリーパー体質なのかな」などと思っていたのですが、これはいま思えば完全に勘違いもいいところでした。単にアルコールを分解した毒物であるアセトアルデヒドが、睡眠の質を低下させ、眠りを浅くしていただけだったのです。

ですから休肝日のときは、とにかく寝ることができません。寝られないからついついスマホやタブレットをいじってしまい、眠れない夜が続いてしまいます。寝たとしても数時間で、眠りも浅いので寝たという実感も得られません。

また「運動して適度に疲れれば、寝ることができる」とよくいいますが、自分の場合、あまりこれは当てはまりませんでした。とりわけ、登山のときは深刻です。当時、私は登山での宿泊には山小屋を利用していましたが、消灯時間と起床時間はとても早めになります(たいてい21時ころには就寝、朝5〜6時ころには起床)。ただでさえ普段と生活リズムが大きく違うのに加えて、登山で日中クタクタになるほど動いているにもかかわらず、全く眠気は訪れません。山小屋やテントで酒を浴びるように飲むわけにもいきませんし、(これはアルコール病棟でもよく聞かれる悩みですが)周りの登山者の多くがイビキをグーグーかいているのを聞きながら、数時間も寝られないのは非常に苦痛でした。当然眠りも浅く、そんなフラフラの状態で翌日も登山行動をしなければならないのは、純粋に安全上の危険も感じました。

そこで自分が人生で初めて手を出したのが、俗にいう睡眠薬(睡眠導入剤)でした。自分の場合はそれまで精神科や心療内科にかかったことはなかったのですが、とにかく「睡眠だけが欲しい!」「ぐっすり寝たい!」という一心で、近場の心療内科に飛び入りました。ドアを空けた瞬間、「ここは心療内科ですけど……」と窓口の方に言われたのを、よく覚えています(そのときは藁をも掴む思いで入ったので、心療内科ではいきなり予約なしで診てくださることはない、ということを知らなかったのです)。ただこのときは幸いにも、「アルコールをかなり飲まないと寝られず、休肝日も作りたい」と不眠症で悩んでいることを率直に伝えたところ、かなり強い睡眠導入剤を処方いただくことができました。実際、初めてこの薬を飲んだときは、お酒を飲まなくてもここまで熟睡できるのかと、感動すら覚えました。

運動と睡眠薬。この2つを1年間ほど活用した結果、翌年の健康診断では、懸案だった γ-GTP 値は大幅に下がりました(といっても正常値の80ギリギリでしたが……)。腹部エコー検査でも「本当に脂肪肝と去年言われたんですか?」と担当の方に言われるほど、真っ白だった肝臓はクリアな状態に戻っていました(ところどころに脂肪の筋がわずかに残り、それがまるで銀河系の星々のように輝いて見えたのを、よく覚えています)。

しかしこの1年の「努力」は、いま振り返れば、自分にとってアルコールの克服どころか、むしろアルコール依存症への道を踏み出す一歩になってしまったと思います。というのも、「よし、自分はアルコールを独力で克服できた」などと思い上がってしまったのです。そして次第に自分は、「肝臓もすっかり回復したのだから」と慢心し、アルコールの量を次第に増やしていきました。

そしてアルコールと同じく、人間は睡眠薬にも耐性がつきます。私の場合、睡眠薬だけでは眠れなくなる日が来るまで、そう長い時間はかからなかったのです。(続く)

アル中で入院するまで(3):睡眠薬の効き目の薄れと睡眠障害の始まり【没落編】
睡眠薬。それは私にとって、最初のうちは驚くほどよく効きました。人によっては、副作用なのか、それとも薬が効きすぎてしまうのか、「目覚めがよくない」「起きたあともフラついてしまう」などの症状が出てしまい、薬が合わない方もいるようです。しかし私の

【まとめ:自分なりに重要だと思うこと】

  • 健康診断でγ-GTPで悪い数字が出ても、その数値自体は、(まだ脂肪肝の段階であれば)わりと節酒や適度な運動によりすぐに回復できてしまう。しかし、これで「肝臓がよくなったからまた飲める」と思ってしまうと、アルコール依存症への転落を早めることになる
  • 「お酒を飲まないと寝ることができない」というのは危険な状態。確かにアルコールは寝付きを良くしてくれるが、アセトアルデヒドは睡眠自体の質を下げている。その際、精神科・心療内科などで処方していただける睡眠薬(睡眠導入剤)は、お酒を飲まないで就寝する「休肝日」を作るのに、有効な手立ての1つである。しかし、睡眠薬にも耐性はつく

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