アルコール依存症者の、アルコール依存症者による、アルコール依存症者のためのブログを、はじめました。

01.アル中病棟 入院するまで

みなさま、はじめまして。このたび、「アルコール依存症(アルコール中毒、アル中)」をテーマにしたブログを書き始めることにしました、philosobrates(フィロソブラテス) といいます。

ブログ名は少し長いのですが、”A littele sophia, at least sobriety(わずかでも智を、せめて素 [シラフ] であれ)”という、いまの率直な思いをそのまま文章にしてみました。「sober(”sobriety=酒を飲んでいないシラフの状態”を維持した人)」としてアルコール依存症と終生向き合い、少しでもこの病から得た知を、同じ病で苦しむ人に届けたいという願いを込めてあります。

私は自己紹介にも書いたとおり、2018年秋、人生で初めて、「アルコール依存症」で約2ヶ月の入院生活を送りました。入院したのは首都圏近郊のとある精神科の病棟で、なかでもアルコール依存症の専門病棟、いわゆる「アル中病棟」です。

このブログは、その入院期間中から書こうと思っていました。アルコール依存症はしばしば「否認の病」であると言われるように、私も自らを「アルコール依存症」と認めて入院するまでには、長い格闘のプロセスが必要でした。その結果として、私は約2ヶ月の入院生活を経て、さまざまな人々と出会い、多くの出来事を経験し、そこから無数の得難い「学び」や「気づき」を得ることができました。このブログは、その入院中から書き溜めていたメモをもとに書きはじめています。

そしてなにより私は、このブログを、この病気と一生付き合っていくことになる私自身のために書きたいと思っています。もちろん入院生活それ自体も非常に重要な出来事であり、自分にとっての大きな人生の転機でしたが、むしろアルコール依存症者にとっては、退院後の断酒生活/人生(sober life)こそが「本番」です。このブログでも何度も触れていくことになると思いますが、アルコール依存症は現在の医学では、決して治すことのできない不治の病だからです。エイズやガンといった難病や、うつ病といった精神病を着実に克服しつつある21世紀現在の医療技術ですら、アルコール依存症の完全治療はいまだ不可能とされています。そんな「難病」だからこそ、私は入院生活や退院後の断酒生活を忘れずに何度も振り返り、今後一生にわたる断酒を誓った自分を縛り、監視し、記録しつづけるための場所として、ブログという手段を選びました。

またこのブログは、おそらく数ヶ月前の入院前の私と同じように、「自分はアルコール依存症かもしれない(いや、もう依存症なのはほぼ間違いないが、入院はしたくない)」「もうこれ以上アルコールには苦しめられたくないが、どうしても自分の力ではやめられない」という苦悩を抱えている方や、その家族にとっても有益なはずだと信じています。

というのも、Web上にはアルコール依存症に関する医療情報や診断チェックなどは多数存在していますが、アルコール依存症にかかった当事者目線からのまとまった情報や記録といったものは、病気の特性上もあり、あまりまだ見当たらないような気がします。それも当然のことでしょう。自分から、アルコール依存症であることを公に語るのは非常に勇気がいることです。インターネットというある程度の匿名性を確保してくれる場所であっても、この病と向き合い、その自分の姿を言葉の上だけでもさらけ出すのは、正直にいって非常にメンタル的にしんどいものがあります。

また日本では、漫画家の吾妻ひでお氏による記念碑的力作『失踪日記2 アル中病棟』(イースト・プレス、2013年)のように、アルコール病棟とはいかなる場所であり、どのような人々が日々の入院生活を送っている場所なのかについて、非常に詳細かつ、わかりやすく紹介してくれているコミックも存在しています。しかし同書には、私見のかぎり少なからぬ問題もあると思います。それは次の2点です:

①「同書に描かれている時期は1998年末以降のものであり、本ブログが執筆されている2018年現在から20年前と、現在とは大きく変わっている部分が多数ある」

どんな書籍も時代の変化にもさらされるわけで、この1点目は仕方がないことだとしても、次の2点目はより重要だと私は考えています。それは次のようなものです。

②「同書は入院患者たちのキャラを立てた”ギャグ漫画”としてのテイストが強く、アルコール病棟に対する偏見を持たせてしまう可能性がある」

この2点において、同書は特に「アルコール依存症で入院するかどうか悩んでいる人」の場合、その内容を鵜呑みにするのは危険ですらある、と私は考えています。

もちろん、同書を読むべきではない、などとは言うつもりは毛頭ありません。未読の方は、むしろ今すぐにでも読むべきです。ただ、同書があまりにも緻密でわかりやすく、かつギャグ漫画として優れて「冷静に引いたカメラアイ」から描かれてしまっているがゆえに、「なんだ、アル中病棟とはこんなものなのか(これなら、入院しても意味なんてないじゃないか)」とわかった気になってしまう書籍だともいえます。

正直にいえば、少なくとも私自身がそうでした。アルコール依存症だと自覚を深めながら、何度も同書を読み返すたびに、「こんな場所なら、わざわ入院しても仕方がない」「何が悲しくて、こんなところに入院しなければならないのか。マンガで十分だ」と思ってしまう自分がいたのです。これは、自分にとっては明らかによくない影響だったと今は思っています(それでも、繰り返しますが、同書の価値が毀損することは決してありません。いいかえれば、同書はあまりにもよく描かれすぎているがゆえに、アル中の弱体化した自分の脳には事前に「効きすぎてしまった」のかもしれません)。

前置きがずいぶんと長くなってしまいました。改めていえば、本ブログではアルコール依存症の当事者の目線から、「アルコール依存症とは果たしてどのような病なのか?」「アル中病棟での入院生活とはどのようなものなのか?」「(『アル中病棟』ではあまり描かれていない)アル中病棟から退院した後の断酒生活とはどのようなものか?」といった点について書いていくことにしたいと思います。

特に最後の「退院後の断酒生活」については、まだ退院まもない私にとって、現在進行形で実行中の営みでもあり、答えが決して出るものではありませんし、アルコール依存症という「不治の病」にかかった人間にとっては、文字通り死ぬまでつきまとう難問です。しかし、絶対に解決不能なアポリア、というわけでもありません。アルコール依存症から奇跡の回復を果たした人々も、この世界にはすでに多数存在しています。いま私は、そうした事実を、AAのような自助グループに足を運び、この目で見ることで、確かな現実として受け止めているまっ最中です。

私も願わくならば、そうした断酒者(Sober: ソーバー = “酒を飲まないで断酒している人”の意)の1人として、今後の人生を過ごしていきたいと思っています。酒におぼれていた数ヶ月前の自分からすれば、それだけでも全く考えられないような心境の変化です。この決意をゆめゆめ忘れぬよう、未来の自分に届けるように、ゆっくりと丁寧に、それこそライフワークのようにこのブログを末永く更新していければと考えています。それでは、よろしくお願いします。

 

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